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NOREN 01 肉寿司ロゴ

肉寿司

株式会社スパイスワークスホールディングス
株式会社スパイスワークス(現:スパイスワークスホールディングス)は2017年7月に株式会社ガーデンへ『肉寿司』を譲渡。
3ヶ月強のスピード感あるディールと、譲渡後も店舗の店舗設計・メニュー開発といった運営以外の部分に関わるという特殊な契約で、M&Aに至った。
sell
下遠野 亘|SHIMOTONO WATARU
1974年生まれ、千葉県出身。建築専門学校卒業後に設計施工会社へ就職し、1995年には飲食業界へ転身した。イタリアン・フレンチの修行を積み、2006年に「株式会社スパイスワークス(現:株式会社スパイスワークスホールディングス)」を設立。店舗設計から飲食店の企画・運営まで総合的に手がけ、多数の飲食店の店舗を展開している。
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肉寿司

株式会社スパイスワークス
ホールディングス
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株式会社スパイスワークス(現:スパイスワークスホールディングス)は2017年7月に株式会社ガーデンへ『肉寿司』を譲渡。
3ヶ月強のスピード感あるディールと、譲渡後も店舗の店舗設計・メニュー開発といった運営以外の部分に関わるという特殊な契約で、M&Aに至った。
下遠野 亘|SHIMOTONO WATARU
1974年生まれ、千葉県出身。建築専門学校卒業後に設計施工会社へ就職し、1995年には飲食業界へ転身した。イタリアン・フレンチの修行を積み、2006年に「株式会社スパイスワークス(現:株式会社スパイスワークスホールディングス)」を設立。店舗設計から飲食店の企画・運営まで総合的に手がけ、多数の飲食店の店舗を展開している。
事業の生みの親として、
育ての親に「お嫁に出す」という発想
中塚:M&A に至るまでの御社の簡単な沿革と、M&A を考え始めたきっかけを教えてください。

下遠野:弊社の創業事業は 2005 年に水道橋に出店した「仕事馬」です。そこで馬肉を扱っており、馬肉の生産者さんとのネットワークができました。その中で、生産者がとても困っている状況を知りました。当時、馬肉をよく食べていたのは限られた地方だけで、その地方では高齢化が進んでおり、馬肉の消費量は減る一方だったのです。
今もそうですが、私はそういった斜陽業態を立て直すことが好きで、後に古民家再生とか横丁系施設を手掛けたのも、その気持ちが根底にあります。そこで「肉寿司」の業態を発案して、2010 年に1号店を恵比寿にオープンしました。「肉寿司」は、馬肉で寿司という、全く新しい業態でしたから、オープン当初はやや苦戦しました。しかし牛の生肉提供が禁止されるなど時流の後押しもあって、その後弊社で一番の成長株になってくれました。
弊社の基本コンセプトは「飲食にまつわることのすべて」を提供することです。業態やメニューの企画、店舗の運営管理、そして私が建築業界出身のため、店舗設計やデザインも行います。
横丁系施設のような「街そのもの」も企画しましたし、宿泊事業にも乗り出しました。そして、さらなる成長を目指すために会社がどうあるべきか。言い換えれば、どうすればお客様と、働いてくれるスタッフたちにもっと大きな喜びを届けられるのか。それを考えていたとき、肉寿司を「お嫁に出す」という選択肢が浮かんできたのです。

中塚:事業を「お嫁に出す」、下遠野さんならではの愛情のこもった発想ですね。

下遠野:もちろん、「肉寿司」が今後も成長をしていくであろうことは確信していましたし、私たちが生んだ業態は子供のように強い愛着があります。ただ、生みの親は子離れして、育ての親のもとにお嫁に出してあげたほうがいいこともある。当時は、自分たちの強みを、新業態をゼロから作り出す、いわゆる「ゼロイチ」にあると考えていたため、肉寿司のように 20~30店舗程度の規模になって子供が成人した時、その後大きく育てる部分は、店舗拡大が得意な企業にお任せしながら、私たちは店舗設計やメニュー開発などの得意とする部分に絞って関わり続ける形ができればいいのではないかと考えはじめました。
事業価値の評価では、財務だけではなく
ポテンシャルや成長性も高い評価を受ける。
中塚:M&A を実施するにあたり、KSG を選んで頂いた理由を教えてください。

下遠野:そのように肉寿司の売却を考え始めたのは 2016 年ごろからで、2016 年の秋に、知人を介して KSGさんをご紹介頂きました。初めての M&A でしたので、自分でも勉強しながら、KSGさんに丁寧に教えて頂き、下地を整えていきました。KSGさんを選んだのは、肉寿司のM&A の業務以外にも、全社ベースの経営相談や、自分自身の相談ごとなどに親身に相談に乗って頂けたからです。経営者に対して周りはどうしてもイエスマンなってしまいがちなのですが、KSGさんがすごいのは、ダメなことはダメとはっきりおっしゃる。その気持ちいいくらいの姿勢に信頼を感じました。
買手であり育ての親となる㈱ガーデンさんとの M&A が動き出したのは 2017 年の 4 月ごろで、肉寿司の株式を譲渡したのが 7 月末。スタートから3か月強のディールでした。
聞くところによると、これは通常よりかなり短期間だったようですが、私はスピード感を重視していたので「7 月までに実施されないならやらない」と最初から KSGさんに伝えていました。少し無理を言ったかもしれませんが、KSG さんには、それにきっちり応える仕事をしていただき、感謝しています。

中塚:今回ご提案させて頂いた M&A スキームについてお話頂けますか?

下遠野:KSGさんからの提案は、㈱スパイスワークスから「肉寿司」を新設分割し、その㈱肉寿司の株式を譲渡する会社分割スキームでした。今回は会社の譲渡ではなくブランドの譲渡なので、事業譲渡という選択肢もありましたが、それだと取引先との個別契約などをひとつひとつ再契約しなければならず、非常に手間やコストがかかります。会社分割スキームの場合は、包括承継という形になり、基本的に個別の再契約が不要で、ベストなスキームだったと思っています。
ただし、賃貸借契約に関しては、家主さんへの事前確認が必要なケースが多く、実は M&Aの中でこの賃貸借契約の承継が一番大変です。この点、KSGさんは不動産の専門部隊も持っており、交渉のサポートをして頂き、非常に助かりました。
また、事業価値の評価に関しては、財務内容に限らず、肉寿司がもつポテンシャルや成長性を高く評価頂きました。その点は、非常に満足しています。

中塚:さらに今回、かなり変則的で、過去のM&Aでもなかなか例のないストラクチャーを実行しました。

下遠野:はい、今回は「売っておしまい」という形ではなく、売却後も、私たちが「肉寿司」の店舗設計、メニュー開発など、運営以外の部分に関わらせて頂くという契約としました。
先にも述べたように、生みの親としては、当然「肉寿司」には今後も時代にあわせて進化しながら、成長してもらいたいし、私たちには育ての親と一緒にそれができる自信があります。
その意味で、今回の M&A は、非常に良いストラクチャーをご提案頂いたと思っています。
肩の力を抜いてM&Aを
検討することが、飲食業界の将来につながる
中塚:M&A を経験して気づいたことはありますか?

下遠野:弊社には、「江戸肉割烹築地さゝや」というブランドがあります。私の叔父が8代目だったのですが、後継ぎがいないまま亡くなってしまい、半ば勝手に私が9代目を名乗ってのれんを引き継ぎました。私が継がなければ、8代目でのれんは途絶えていたでしょう。
実は地方の街でも、100 年、200 年と続いている老舗の飲食店は、結構たくさんあるのです。
ところが今、そういう小さな老舗が、日本全国でどんどん廃業しています。儲からないからではなく、後継者がいないからです。
それは、とてももったいないことではないでしょうか。小さくてもしっかり利益を出して存続してきたということは、世の中に役立つ価値を生んでいるということです。価値を生んでいるのに、引き継ぐ者がいないからなくなってしまうのは、社会的な損失にもなります。
そこで、M&A による事業承継は、もっと利用されていいと思いますが、実際にはまだまだ少数派です。それは、単に知らないということもあるでしょうし、また外部の人に経営を渡すことに対するネガティブな気持ちもあるでしょう。
しかし、老舗というのは、突き詰めると「のれん」です。経営者ではありません。そして「のれん」には、その「のれん」を「のれん」たらしめている理念があります。理念があるからこそ、のれんが続いてきたわけでしょう。
それなら、経営者が変わっても「のれん」と理念が引き継がれていくなら、そこには大きな意味があると思うのです。

中塚:外食ブランドの M&A は、言い換えると「のれんを引き継ぐ」こと。すごく素敵で意味深い言葉ですね。

下遠野:もちろん、売って終わりというドライな M&A を推奨したいわけではありません。しかし、M&Aに対して無知であることや拒否感が強いことが、これからの日本の飲食業界における事業承継を考えるとき、大きな社会的損失になっているとは感じます。少し肩の力を抜いて、「M&A という選択肢もあるよね」という感じで、選択肢の 1 つとして検討されてもいいのではないでしょうか。
少なくとも私は、「肉寿司」の M&A を経験したことで、長期的な経営戦略面でも大きなプラスを得ることができました。今後、自社事業の売却は考えておりませんが、今度は逆に買手側として、事業の譲り受けを検討しています。その際にも、肉寿司のディール経験が役立っています。

中塚:M&A のクロージング後も、御社の組織再編など、良いお付き合いをさせて頂いています。

下遠野:はい。肉寿司の M&Aがクロージングした後、KSGさんには弊社のホールディングス化など組織再編もお手伝い頂き、計10社ある子会社を傘下に持つ㈱スパイスワークスホールディングスを設立しました。これは将来のIPOへの布石という意味もあります。
IPOについても、経営戦略上の1つのオプションであり、それ自体を目的化しているわけではありません。しかしIPOによって、私たちの理念がよりよく実現されていき、スパイスワークスというのれんに磨きがかかるのであれば、それは積極的に選び取るべきオプションであると考えています。
老舗というのは、
突き詰めると
結局「のれん」です。
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